転轍器

古き良き時代の鉄道情景

キュウロク…2輛


 駅から線路端を歩いて長い編成が収まる高い位置を探していた。背後から汽笛の音が聞こえる。思わず振り向くと足元のレールには車輪の振動が伝わってきてまるで怪物が早足で迫って来るような切迫感を味わう。犬走りの脇に寄って遠慮がちに構えた構図はあせって画面が震えていた。

 身をかがめて貨車の列の通過を見送る。セフの後にはもう1輛のキュウロクがパワー全開で巨体を震わせながら後押ししていた。

 2輛のキュウロクは10‰の勾配もものともせず石灰石満載の重たく長い編成をかなりのスピードで登坂して行った。 田川線内田(信)〜勾金 460レ 本務機:69615〔行〕 後補機:19616〔後〕 S46(1971)/4

 撮影場所から北側に目をやると筑豊の象徴、香春岳が望める。この一帯は鉄道路線の複雑地帯で、勾金駅西側で田川線添田線が立体交差し、その添田線と日田彦山線は画面正面のセメント工場近くの香春駅へと続く。またセメント工場からの専用線は夏吉貨物駅を通って勾金駅へ延びるという、まるで模型レイアウトのような所であった。