転轍器

古き良き時代の鉄道情景

伊田線 中元寺川の両岸

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 筑豊の鉄道地図を見ると直方平野を縦横無尽に張り巡らされた路線は川の流れに沿って敷設されているのがわかる。筑豊の石炭はその昔遠賀川を川船で運ばれていた。その輸送手段が鉄道に変わってからも運炭ルートは川の流れに沿って変わっていないことを思い知らされる。糸田線筑紫山地から流れる中元寺川に沿って金田で伊田線に接続、中元寺川は同じように金田付近で彦山川と合流、伊田線彦山川に沿って直方で筑豊本線に接続する。彦山川は直方付近で本流の遠賀川に注いで鉄道の本流筑豊本線と並行して若松へと至り、鉄道と河川の同様な分岐・合流が興味深い。
  写真は伊田線赤池駅東方で彦山川より中元寺川が分かれてすぐの所に架橋された複線の中元寺川橋梁を行く気動車列車で、前2輛が後藤寺発の糸田線経由、後ろ3輛が伊田発で金田で併結して直方へ向かう。直方と伊田・後藤寺を結ぶ列車はこのパターンが数本設定されていた。対岸は広大な構内を有する金田駅で照明塔が林立している様子がうかがえる。 228D 伊田線赤池~金田 S48(1973)/3/31

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 中元寺川左岸の築堤でキュウロクの牽く石灰石専用列車を待つ。貨車はボギーのセキが5輛、2軸のセラが4輛、日鉄鉱業の独特のスタイルをしたホキ8000が10輛以上続いているように見える。 伊田線赤池~金田 S48(1973)/3/31

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 船尾駅日鉄鉱業専用線で見たホキ8000を従えた枝光行は行橋機関区の39682〔行〕が牽いて来た。セキ+ホキ8000の編成は筑豊本線ではD51が牽引しているのを見ているので、伊田線から筑豊本線鹿児島本線乗入れの貨物列車は直方で機関車が交替するものと思われる。 5592レ 伊田線赤池~金田 S48(1973)/3/31

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 重々しいジョイント音で流れるホキ8000の列。ホキ8000はバラスト散布用のホキ800の荷台を長く引き伸ばしたような独特のスタイル。日鉄鉱業の私有車で全16輛が船尾駅に常備されている。35㌧積でセキ6000より5㌧荷重が多い。 ホキ8014 形式ホキ8000 石灰石専用 日鉄鉱業株式会社 船尾駅常備

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 当時の趣味誌でよく見かけた筑豊本線を行くD60やD50牽引のホキ6800の編成美が印象に残っている。この地を訪れて初めてその編成は中元寺川右岸に位置する金田から出ていることを知った。平坦な伊田線にあって中元寺川橋梁の赤池側は若干の上り勾配で、29641〔直〕が煙を噴き上げて積車ホキ6800編成を牽くさまは迫力ある構図となった。 5292レ 伊田線赤池~金田 S48(1973)/3/31

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 直方機関区の29641〔直〕はデフ無し、継足し無しの化粧煙突で独特の雰囲気を醸し出しているように感じる。サイドの配管は空気溜の上の放熱管くらいですっきりしているように見える。前照灯は厚みの薄いLP42と大形のLP403があるようだがこれは前者のタイプであろうか。

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ホキ6801 形式ホキ6800 セメントクリンカ専用 三井セメント株式会社 金田駅常備

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 49688〔直〕の牽く空車返送の上戸畑発船尾行が中元寺川橋梁を渡る。後方に見える山は赤池炭鉱のボタ山であろうか。全盛期の筑豊鉄道路線図を見ると伊田線では中泉から大城、赤池から赤池炭鉱、金田から方城の各貨物駅に分岐線が設けられていた。「日本鉄道旅行地図帳12九州・沖縄」(新潮社/平成21年4月刊)に掲載された昭和32年の駅別石炭発送量を見ると伊田線関連では伊田赤池炭鉱(貨)、方城(貨)、中泉、金田が上位にランクされていた。 5595レ 伊田線赤池~金田 S48(1973)/3/31

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 ホキ6800の空車返送列車が中元寺川橋梁下り線に現れる。金田着なので牽引機は逆行運転だ。上り線で見える標識は橋梁通過30km/h制限と思われる。29641〔直〕のテンダのプレートはゴシック体の形式入であった。 外浜発金田行5291レ 伊田線赤池~金田 S48(1973)/3/31

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 金田構内の編成ごとの転線は本線に入り中元寺川橋梁の中程まで進み後退する。手前に見えるホキ6800はトップナンバーのホキ6800であった。 伊田線赤池~金田 S48(1973)/3/31