転轍器

古き良き時代の鉄道情景

79602

 79602は「蒸気機関車No.55(昭和53年5月号)」の9600番号順配置表によると、昭和8年鳥栖ー昭和22年佐賀ー昭和36年宮地と記載され、一貫して九州内を回っていたようだ。宮地機関区は昭和39年の豊肥本線DC化の際に熊本機関区に統合され、79602は昭和48年の無煙化まで熊本機関区で活躍した。さらに遠く北海道は倶知安、追分機関区と渡り、国鉄蒸気機関車終焉を迎えるまで残留した中の1輌となった。

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 豊肥本線144.5㌔ポストを79602〔熊〕の牽く上り貨物列車が行く。熊本~大分往復の貨物はタンク車をよく見かけたので当時は竜田口と鶴崎の間を行き来していたものと思っていた。後年、中判田に出光興産の専用線があったことを知り、LPガスのタンク車は中判田までの運用であったものと推測する。 794レ 豊肥本線滝尾~下郡(信) S44(1969)/8/13

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 よく見かけたタンク車は灰色のアポロマークを掲げた異様に長いこの車輌。豊肥本線では黒い2軸貨車の中でとても目立つ存在であった。 タサ5722 形式タサ5700 豊肥本線滝尾 S45(1970)/5

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 豊肥本線熊本口のダイヤを見ると竜田口発着の貨物列車が2往復設定されていた。大規模な貨物基地があるのではないかと途中下車してみると、何とそこは貨物側線1本の平凡な駅で期待はずれであった。逆向きの79602〔熊〕が5輌のガソリンタンカーを牽き出す。 1796レ 豊肥本線竜田口 S47(1972)/3/29

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 竜田口を出ると第2白川橋梁にかけて15‰の上り勾配を進む。 1796レ 豊肥本線水前寺~竜田口 S47(1972)/3/29

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 竜田口を出たタンカー編成は水前寺で交換と追越しのため退避線でしばらく休む。竜田口に対して水前寺と南熊本は広範な貨物設備があり水前寺と南熊本で入換を行う区間貨物も設定されていたようだ。追分機関区で国鉄蒸気機関車最終メンバーの1輛となった79602と大分、熊本で会うことができたのはとても幸運であった。 1796レ 豊肥本線水前寺 S47(1972)/3/29