転轍器

古き良き時代の鉄道情景

夕暮れの水前寺

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 九州には「寺」のつく駅が6つある。日豊本線豊前善光寺久大本線善導寺日田彦山線後藤寺、筑肥線周船寺宮原線宝泉寺、そして豊肥本線水前寺。ここ水前寺を訪れたのは9600重連の宮地行を撮るためである。水前寺の構内はとても広く隣りの南熊本とともにとても丙線の豊肥本線の駅風景とは思えない幹線風の構えに驚いた。夕暮れ時の構内を遠望すると下り本線宮地行の9600重連が二条の煙を上げて発車待ち。隣りの副本線は竜田口からのタンカー編成の緩急車が見える。ヤードは貨車移動機と貨車群、新鋭12系客車も留置され活気溢れる鉄道風景が展開していた。熊本近郊の上熊本南熊本、水前寺、竜田口は9600の小運転列車が設定されていたようだ。 豊肥本線水前寺 S47(1972)/3/29

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 汽笛二声の後二条の煙は濃くなりドレンをきって8輌編成は動き始める。緊張のひと時、機関車の動きを固唾を呑んで見守る。  1727レ 豊肥本線水前寺 S47(1972)/3/29

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 前補機69616〔熊〕と本務機69699〔熊〕、この2機はとても良く似ている。両機ともパイプ煙突で大きな特ちょうは無いものの、異なる箇所はデフの点検窓の有無、元空気溜上のランボードの高さ、テンダのリベットラインくらいであろうか。補機69616〔熊〕は立野までの運用で立野からは単機で熊本に戻って来る。

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 水前寺終点方で機関車2輌と客車8輌の宮地・高森行列車を見送る。迫力ある発車シーンをファインダーで追いかけたその瞬間、69616〔熊〕キャブの焚口から火床の真っ赤な光りが飛び込んできて機関車の躍動を実感、その光景は今でも脳裏に焼きついている。偶然写った後方の鉄道通信線電柱は横桟が6段あり、同じ豊肥本線沿線でさまざまなタイプがあるようだ。