転轍器

古き良き時代の鉄道情景

下関9番線23時07分から5分間の記憶

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 門司から潜った海底トンネルを抜けだして下関に着いたブルートレインは停車時間たったの5分で機関車交替が行われる。EF81303〔門〕のステンレスの車体は構内の照明が反射して鈍く光っていた。スタンバイする機関車連結開放のスタッフが写っていた。 下関 S58(1983)/5/2/23:08頃

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 ホーム先端の上屋から下がった信号機は出発進路表示灯であろうか。「上11」、「上10」、「上9」の進路が標記されている。前方の機待ち線は山陽道を走破するEF65のテールランプが暗闇に浮かんでいる。EF81303〔門〕のナンバープレートは緑色に、「門」の区名札差しは赤色に光って見える。 下関 S58(1983)/5/2/23:09頃

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 EF81300番台は昭和48年8月から50年2月にかけて301~304の4輌が増備された。301と302は関門間の貨物列車減少で内郷、田端へと転属しローズピンクに塗られ常磐線で使われていた。EF81303〔門〕はオハネフ25から離れて行く。暗い構内にシルバーの車体が光輝く。 下関 S58(1983)/5/2/23:10頃

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 オハネフ25は折妻タイプを見なれていたが、この時は切妻のオハネフ25で印象が違って見える。テールサインは昭和53年10月改正よりイラストマークになっていた。 下関 S58(1983)/5/2/23:10頃

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 EF81303〔門〕が離れて間髪を入れずにEF651126〔関〕が迫って来る。 下関 S58(1983)/5/2/23:11頃

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 連結完了。ブロアー音が聞こえてきそう。 下関 S58(1983)/5/2/23:11頃

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 別の列車の大きな音が響き渡り、振り返るとEF58牽引の下り荷物列車が6番線に入ってきたところだった。時刻表で確認すると汐留発東小倉行荷39レのようだ。下関23:11着。 S58(1983)/5/2

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 都城発新大阪行3004レ“彗星2号”は下関23:12発。
 横浜在住の友人の結婚式に出席するため私はこの列車に乗車していた。関門を通る夜行列車は幾度も乗車したが機関車交替の模様を撮ったのはこの時だけであった。が、その撮ったことも忘れていた。と、いうのもこのネガの被写体は人物メインであったので通し番号こそ振れ、ネガスキャンは行っていなかった。最近になって古いネガ帳を開き、明かりに照らして見ると何やら機関車が写っていることがわかり、この8コマから下関到着5分間の記憶がおぼろげに浮かんできた。
  それ以降の事は何も覚えていない。広島で連結されるセノハチ補機の連結時の振動や、新大阪からの新幹線“ひかり”のことや、当時“ひかり”は新横浜には停車していなかったので東京から横浜までは113系に乗ったのか等、写真が残っていないので全く記憶にない。ネガは下関の次コマは結婚式の新郎新婦であった。
 この横浜紀行は忘却の彼方に追いやられているが、ひとつだけ目に焼きつけた物がある。それは横浜機関区の扇形庫である。横浜駅から結婚式場までの道のりであったのか、式場のホテルが高層であったからかは定かではないが少し高い位置からヤードが広がる手前に扇形庫が鎮座しているのがはっきりと見えた。旅客線の横浜、桜木町駅からは海岸沿いの貨物線は見えなかったので、都会のど真ん中に位置するヤードと扇形庫にはとても驚きであった。みなとみらいの開発が進む直前の光景を実見できたのは幸運であったと思う。

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 横浜機関区扇形庫と上路式転車台に載るD51130〔新〕 S45(1970)/2/14 撮影:juncyanjiijiさん
 扇形庫出入り線上部の意匠は3連ルーバーのようで気品を感じる。重油タンクを備えた新鶴見のD51130はどこか山線から下りて来たのだろう。手前の線路は桜木町方、東横浜ヤードへ続くルートではないかと想像する。

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 鉄道100年記念列車を牽いたC577が方向転換中。多くの人がその様子を見守っている。横浜機関区扇形庫の輪郭がよくわかる。 S47(1972)/10 撮影:東京都 線路端さん

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 転車台から放射状に広がる線路は扇形庫番線と対応した線路番線が標示されている。転車台運転室のかわいい形状もよくわかる。  S47(1972)/10 撮影:東京都 線路端さん

 私のおぼろげに霞んでいた横浜機関区扇形庫の光景は遠方の友からの画像提供で鮮明な記憶として蘇えった。よくぞこの貴重な光景を撮っておられたと畏敬の念を抱くとともに感謝申し上げたい。