転轍器

古き良き時代の鉄道情景

東武東上線大山の記憶

 「板橋区大山町」へ行くのにただ一度、東武東上線へ乗ったことを覚えている。たった一度なのに何故覚えているか。池袋のヤードで国鉄と私鉄の貨車が並んでいたこと。見慣れた車掌車ではない外国形のようなカブースがいたこと。私鉄沿線なのに貨物ヤードが広がっていたこと等々。これらの印象と大きくカーブした大山駅、駅から続く商店街の街並み、東日本でしか見られない鳩マークの「イトーヨーカドー」を初めて見たこと等々、鉄道情景とその時代の雰囲気がリンクして半世紀前の光景が蘇ってくる。池袋-北池袋-下板橋-大山間わずか3Kmの往復で、乗車したツートンカラーの電車は吊りかけ音を聞いた気もするし、キハ58顔の最新形も乗ったようにも思う。この後セイジクリーム色1色に塗り替えられたので東上線でのツートンカラーは一層印象深いものとなった。昭和49(1974)年の思い出である。

 鉄道趣味でご縁ができた「東上線ブログ」さんにカーブを描く大山駅の写真をお願いする。デザインもカラーリングも一新された現在の東上線に度肝を抜かれる。編成は長くなって駅ホーム前後の商店街へ続く踏切にはかからないのだろかなど余計な心配をする。

 下板橋方を遠望すると電留線が写っている。池袋から乗った電車の進行左側に編成が休む景色があっただろうかと記憶を手繰り寄せてみる。工場地帯の貨物線が並んでいたような気がするが、その位置に電留線もあったのかもしれない。東上線下板橋付近や国鉄赤羽線板橋、山手線池袋、目白構内は不思議な貨物地帯が視界に飛び込んでいたのに、もう少し興味を抱いて再訪していたらまた違った知見が得られていたことであろう。

 あの時目にした狭い街中を縦断する電車風景は東京都と埼玉県を跨ぐ大動脈であった。記憶の中の風景を呼びだしていただいた「東上線ブログ」さん、ありがとうございました。 写真:東上線ブログさん