転轍器

古き良き時代の鉄道情景

向之原

 国鉄時代の向之原駅舎を撮っていたが、残念なことにフィルムをパトローネからあまり引っ張り出さずに巻き込んでしまったからか左半分は感光していた。開業は賀来と同じく大正4(1915)年10月30日であるが、現存の駅舎は国有化された後の大正12年に建てられたとのことであった。
 向之原はこの地域を境に、久大本線は東は河岸平野、西は河岸段丘を行き、平野部と峡谷部のつなぎ目に当る川をはさんで、北の豊前街道と南の肥後街道とをつなぐ交通の要衝であった、と聞く。

 車窓の下に見えた峡谷の大分川は向之原を過ぎると大分平野の穏やかな流れとなる。大分川右岸から向之原へ進入する急行列車を見る。車がやっと通れる道幅の狭い橋は、蒸機時代は確か欄干のない沈み橋だったように記憶している。 久大本線向之原 S61(1986)/5

 2面3線の向之原駅は他の駅と同様にホーム間に平面横断通路が設けられていた。それが横断歩道橋のような跨線橋が架けられたのはいつ頃であっただろうか。上下線とは別のもう1線は貨車の留置線であったが、蒸機時代終焉と共に貨物扱いも終了したようだ。街は大分市ベッドタウンとして都市化が進んでいる。