転轍器

古き良き時代の鉄道情景

自己紹介


 昭和30年代、煙と蒸気を出して走る蒸気機関車を見る日常が、私が汽車好きになった始まりと思われる。大きな車輪が4つにこぶが2つの機関車は傍に寄ると熱くていつ大きな汽笛が鳴るか恐ろしくもあったが、長い列車の先頭で煙をあげる雄姿に魅了された。近くの駅にはいつも貨車が止っていて、有がい車や無がい車、特に家畜車はよく目にし、貨車の入換や積込み、荷卸しを興味深く見ていた。高台から見る客車の屋根は、いつも見る通風器が中央に一列に並ぶ車の他に、通風器の無い二重屋根の車体があった。この原点ともいうべき古き良き時代の鉄道風景が脳裏に焼きついて、鉄道趣味へと発展していく。国鉄好きの田舎者は、都会に出た学生時代、さまざまな楽しみ方(車輛・施設・私鉄・歴史・収集・模型…等々)と出会い、鉄道趣味の範囲の広さ、奥深さを知る。昭和の終わり頃は、貨物輸送の変換、特にヤードや貨物駅の廃止、そして郵便荷物輸送の廃止と続き、私の趣味範囲が狭められていくようで懐古趣味になっていったのかもしれない。                 

 平成に入ってからはかつて撮った汽車の写真を休日に焼きつける、いわゆる現像・停止・定着の暗室作業を行うのが私の趣味の一環であった。撮影後数十年経って初めて光を通すネガもあり、蘇る記憶の感動と新たな発掘に期待を込めて進めてきた。しかし少ない余暇と水温20度前後の気象条件、部屋の目張りや薬剤の準備と片付け等、前後に要する時間が正味の暗室作業を短くし、限界を感じるようになってきた。テキストがワープロからパソコンに切替った頃、写真も取込めばスピードアップできるのではないかとデジタル化へ挑戦した。解像度やファイル形式、保存容量など難解な問題をクリアしながら、ネガからスキャンした画像は、あの現像液の中でゆらゆらと出てくるのと違ってスピーディでシャープに現れ、趣味の銀塩作業は手軽に簡単にパソコン空間が常となった。また写真アルバムはWEB上で作れることを知り、プリントして本の形式からオンラインアルバムへと移行した。

 国鉄時代にただ撮っただけ、とりあえず撮っただけのネガや写真が残っている。いつか仕上げようと整理途中の原稿もそのままになっている。それらの写真やネガ、テキストを整理、編集して魂を注ぎ入れ、ウエブアルバム『転轍器』に貼るのが私の今の日課、いや楽しみとなっている。参考図書として買いためてきた鉄道趣味誌のバックナンバーや書籍、手軽に閲覧できるウエブページ等でネガに残った車輛や施設のことを調べると、これまで知らなかった新たな発見も出てきて、これも楽しい趣味の作業といえる。   大分市 小野和俊
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