転轍器

古き良き時代の鉄道情景

貨物列車+逆向回送客車列車

 過日、九州管内を走っていた客車列車を調べた際、鹿児島本線八代から佐敷まで平日だけ走る片道の列車が気になっていた。そんな折り、小川さんから見せられた電化前の三太郎越えの写真は何か秘めたものを語りかけてくれているような気がしたのは、まさに私が気になっていたその列車そのものだったからだ。思わぬ展開に驚いたのは言うまでもないが、蒸機時代でのその列車を見られたのは大感激であった。

 三太郎越えのひとつ、赤松太郎峠に向かってくる列車は何と貨物列車の後に客車列車が付いた不思議な編成であった。この列車の正体は朝片道だけの八代発佐敷行1125レの折返しを佐敷から上り貨物列車に連結して八代まで回送する2個列車併結の光景であった。 鹿児島本線上田浦~肥後田浦 S45(1970)/7/25

 鹿児島本線電化のポールはすでに建植されている。峠のトンネルに向かって上り勾配を進む機関車は“なめくじ”なので出水機関区のD5130・49・94の何れかであろうか。

 八代から佐敷まで4輛の客車を牽いて来たC57は、機回しも無くそのまま貨物列車の後部に連結する。一見すると逆向後部補機のように見える。何か手がかりはないかと趣味誌を調べたら「鉄道ファン103蒸気機関車撮影地ガイド(昭和44年12月臨時増刊号)」に人吉機関区C57の運用表でこの列車を見出すことができた。

 人吉機関区C57仕業番号28は以下の通り。
  人吉23:50発 1122レ(都城発門司行) 熊本1:50着
  熊本6:49発 125レ 八代7:42着
  八代7:47発 1125レ 佐敷8:27:15着
  佐敷9:00:30発 逆後364レ 八代10:14:30着
  八代11:05発 129レ(熊本発人吉行) 人吉13:00着

 列車密度の高い鹿児島本線ならではの列車運用の妙なのかもしれない。このような例は他地域でも行われていたのか気になるところだ。

 写真は全て:小川秀三さん