転轍器

古き良き時代の鉄道情景

D601


 昭和54年夏、復活蒸機のC571と保存D601に会いに山口県を訪れた。中国自動車道関門橋は開通していたが、九州自動車道は未開通、未だ建設中の時代であった。老兵D601は緑豊かな敷地で黒光りしていた。説明板によると昭和41年12月に廃車とのこと。D60のトップナンバーだったからかもしれないが、SLブーム以前の時期に地域で馴染みの機関車が地元に保存されるというのは先見の明というか意義深く思える。以下説明文から。「ーD60形式1号蒸気機関車についてーD60形式1号機関車は昭和2年3月、9900形式161号機関車として川崎造船所で誕生し、東海道線山陽本線などで活躍していましたが、昭和26年10月、山口線の津和野機関区に配属となり、昭和41年10月まで約15年間山口線の旅客、貨物の輸送に活躍してきました。一方、動力の近代化がすすむにつれて、蒸気機関車はだんだん姿を消すようになり、このD60形式1号機関車も昭和41年12月1日、廃車になりました。蒸気機関車は将来貴重な存在になるものと思われますので、山口県では青少年の教育に役立たせるため、山口線を走ったこの由緒ある機関車を日本国有鉄道から借り受け、県立山口博物館に展示することにしました。昭和43年9月1日 山口県」。D50からD60への改造についてはもう一枚の案内に記載されている。「ーD60形式1号機関車の概要ー昭和2年3月 川崎造船所で9900形式161号機関車として製造/昭和3年10月 車両称号規定改正により、D50形式162号機関車と改称/昭和26年9月 国鉄浜松工場でD60形式1号機関車に改造/昭和26年10月 山口線津和野機関区配属/昭和41年12月 廃車」とあり、機関車寸法、重量、馬力、走行キロ等が紹介されている。D601の保存は地元で活躍した機関車に対する愛着の表れと思う。 県立山口博物館 S54(1979)/8