転轍器

古き良き時代の鉄道情景

瀬野機関区のEF59

 旧形電機の下回りは頑丈そうな台車枠が両側のデッキへ突き出し、車体下部は角度が美しい軸箱と砂箱が綺麗に並ぶ。それにブレーキシリンダにつながるレバー類やロッド類、イコライザーが複雑に絡む構造はまるで芸術作品のようだ。

 東海道に君臨していたEF53は旅客用EF58、貨物用EF15が登場した時代になると小運転や高崎線へと転用され、さらには山陽本線瀬野八越えの補機として脚光を浴びるようになり昭和30年代後半からEF59へと改造されていった。
 EF5910 1エンド側 EF531から改造 S54(1979)/2/6

 瀬野の安芸中野寄り上下本線の真ん中にEF59重連が待機する2線の機待線が設けられていた。瀬野上り本線に入った貨物列車の後部に直接連結できるように、また下り本線に後押しを終えて戻って来た複数の重連がストレートに入れるようにと効率良く配線されていた。
 EF5911は下枠交差のパンタグラフに交換されている。標識灯は旧形電機らしくない埋込仕様になっていた。
 EF5911 2エンド側 EF532から改造

 ひさしの下の端面はドアの両側に付けられたゆるやかな折り曲げが独特の表情を作っている。
 EF5911 1エンド側

 長く突き出た幅の狭いデッキがEF59の特ちょうであった。
 EF596 1エンド側 EF535から改造

 瀬野八越えに従事するEF59は重連総括制御で、1エンド側は総括制御のジャンパ栓が並び、押し上げた列車を走行中に開放するため連結器に自動解錠装置が付けられている。
 EF597 1エンド側 EF536から改造

 年輪が刻まれた車体、磨かれて光る切抜きナンバー、独特な標識灯、「瀬」の区名札、どれも瀬野八補機の風格が漂っている。

 車体前面のひさしはEF10やEF11のそれと良く似ている。側面はリベットの帯が車体を巻きつけて補強しているようなディテールが特ちょうであった。モニタールーフがわずかに見える。
 EF598 2エンド側 EF537から改造

 1エンド側端梁はさまざまな機器が付いて複雑怪奇に映る。開放テコの下の箱は「並⇔密」の標記があり、連結器の切替えスイッチかと思われる。
 EF591 1エンド側 EF538から改造

 2エンド側のフロントガラスは他の罐では見られない保護棒が付けられていた。後部標識灯は取っ手が付いて取外しできるタイプでとても味がある。
 EF591 2エンド側

 EF591は昭和38年3月、鷹取工場でEF538から改造された。そのEF538は昭和7年日立製作所で誕生している。

 1エンド側の連結器は2エンド側のそれとは全くちがう形状の電気連結器と空気管を組込んだ電空付密着自動連結器が取付けられていた。EF65FやEF66が牽引する高速貨物列車を自動開放するために開発されたとのこと。
 EF595 1エンド側 EF5312から改造

 運転席側窓の水切りの形状がよくわかる。
 EF595 2エンド側

 2エンド側の台車枠端梁はすっきりしている。ナンバーはプレート式が付いて他機とは異なっていた。また標識灯もEF5911同様埋込式となっている。
 EF5918 2エンド側 EF5315から改造

 ブレーキ棒がフレームに沿って引かれブレーキシリンダ前のレバーにロッドで結ばれているのがわかる。
EF5918 1エンド側

 少し高い位置からは長いステップへ続く広いデッキの形状がよくわかり、デッキ支柱の曲線はとても優雅に映る。
 EF5916 EF5317から改造

 撮影日:記載以外はS57(1982)/8/18 瀬野機関区