転轍器

古き良き時代の鉄道情景

湯田中慕情

 出張で訪れた湯田中温泉街、目と鼻の先に長野電鉄湯田中駅があり、記念撮影ができないまま長野紀行は終わってしまった。線路端さんから同時期に湯田中駅で撮った写真があるとの連絡をいただき、見果てぬ夢に終わった湯田中の情景に慕情を抱く。

 湯田中駅へは急勾配を駆けあがってホームに入る様子が写真から伝わってくる。駅構内の有効長の関係から一旦駅に入った列車はスイッチバックで後退してホームに収まるという変則な動きを行っていたようだ。アプト時代の信越本線熊ノ平と同様な運転形態ではないかと思う。線路端さんから「あの日、目にされたであろう温泉街へのアーチが見えます」との便りをいただいた。 湯田中  H16(2004)/2/1 撮影:線路端さん

 私が思いを抱く湯田中の情景はまさにこの構図だったのではないか。 湯田中 H16(2004)/2/1 撮影:線路端さん

 ホームの情景は古き良き時代を彷彿とさせる、ひなびた温泉地の終着駅の雰囲気が漂う。ホーム屋根の差しかけときれいな柱、軒桁の方杖と軒樋は歴史の重みを醸し出しているようだ。琺瑯看板の国鉄書体のような案内表記、楷書体の乗場案内は旅情と郷愁を誘う。 湯田中 H16(2004)/2/1 撮影:線路端さん

 しかし駅舎はホームの情景とはおよそ結びつかない立派な建物で近代的な様相を呈している。一大観光地、志賀高原の玄関口を誇る風格を感じる。長野からやってくる特急電車は時代とともに新鋭車輛が投入され、その様子は「線路端のブログⅡ」で紹介されている。 湯田中 H16(2004)/2/1 撮影:線路端さん