津久見のヤードに小野田セメント所有の私有貨車が止まっていた。以前国鉄機関士の方から「海崎と津久見からつなぐセメントの貨車はとても重たかった。またチップを積んだ貨車をつないだ日に雨が降るとそのチップが何倍もの重さになってこれもつらかった」といった話を聞いて印象に残っていた。あの話の重たい貨車はタキ1900とホキ7500のことと思われる。
コタキ112168 形式タキ1900 小野田セメント セメント専用 津久見駅常備 日豊本線津久見 S56(1981)/2
同じタキ1900でも形態の種類はたくさんあるようだ。91949はタンク体に巻かれた補強のような帯材はなく梯子の形状も異なる。ごつい印象とは対照的なおとなしいディテールに見える。前述の機関士さんは「小野田セメントの貨車は本務機が直接専用線に入って取りに行っていた」と話され、貴重な証言を得たような感覚を覚える。
コタキ91949 形式タキ1900 小野田セメント セメント専用 津久見駅常備 日豊本線津久見 S56(1981)/2
話に出た重たい貨車はホキ7500も同様であろう。プロフェッサー吉岡の私有貨車図鑑によるとホキ7500は昭和42~43年にかけて22輌が製作され、うち20輌は小野田セメントの所有車であった。複雑で独特な車体は模型のバラキットも見かけたが組み立てはとても難しそうであった。
ホキ7502 形式ホキ7500 小野田セメント セメント専用 津久見駅常備 日豊本線津久見 S56(1981)/2
蒸機時代に会ったタキ1900は上回りに隣車へ渡るためのランボードが付いていた。形式標記で小さなカタカナの特殊標記符号は規定前で記されていない。
タキ111982 形式タキ1900 日本セメント株式会社 セメント専用 香春駅常備 日田彦山線香春 S48(1973)/3/30
蒸機時代から12年後の香春駅。機関車はDD51になって依然として香春工場専用線からタキ1900の列が送り出されていた。駅名標を見ると隣駅の伊田はこの時頭に田川が付けられていた。また廃線となった添田線の次駅上伊田はテープで消され、新旧の事柄が混在していた。
コタキ112529 形式タキ1900 日本セメント株式会社 セメント専用 香春駅常備 日田彦山線香春 S60(1985)/8/17
日本セメント香春工場からのセメント列車は撮影時、日田彦山線経由外浜行のルートと田川線夏吉、勾金経由苅田港行のルートがあったようだ。
コタキ112526 形式タキ1900 日本セメント株式会社 セメント専用 香春駅常備 苅田港線苅田港 S60(1985)/8/17
タキ1900のナンバリングは1999を越えると11900番台、21900番台と付番されるようである。冒頭のタキ112168はその法則には乗らず不思議なナンバーと思える。レイルマガジンNo.339プロフェッサー吉岡の貨車研究室によると111900番台の途中から112000番台に飛んでいるようだ。ちなみに61986は昭和45年、91949は昭和46年、112168は昭和48年の落成車で所有者も写真に写った社名板の通りであった。
コタキ61986 形式タキ1900 明星セメント株式会社 セメント専用 糸魚川駅常備 北陸本線小杉 S51(1976)/9/17