転轍器

古き良き時代の鉄道情景

豊州本線開業時の機関車のこと

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 昭和51年10月25日は津久見駅開業60周年記念の日で記念急行券が発行されていた。津久見は「みかんとセメントの町」、そのキャッチフレーズが水彩画のタッチで効果的に描かれていた。津久見駅は大正5年10月25日、当時の建設線名佐伯線が臼杵から佐伯まで開業した時に誕生、同日小倉~佐伯間を豊州本線と定められた(鉄輪の轟き/九州旅客鉄道)。

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記念急行券左下を拡大

 左端の機関車のイラストは「開業当時のSL8500型式」とキャプションが添えられている。はて?8550ではないのか。これまであまり古典には興味を抱かなかったが歳のせいか、歴史を把握したいと渇望するようになった。
 「九州の蒸気機関車」(葦書房)によると、九州鉄道がアメリカアルコ社から輸入した5700形、8550形が後の日豊本線で使用されたとある。61輌の8550形は軸配置1Cの客貨両用機で昭和期のC58形に相当する機種であったようだ。8500の事は「国鉄蒸気機関車小史」(鉄道図書刊行会)に詳述されていた。61輌の8550のうち12輌を大正10年5月から翌年3月まで小倉工場で飽和式から加熱式に改造し、形式8500に変更されたとのことであった。
 ここで疑問が生じてくる。津久見の開業は大正5年10月、8550から8500への改造は5年後の大正10年5月となり、開業時は8550であったと思われる。イラストのナンバープレートは8553でこのナンバーは形式8550、そして改造対象機となった8553は新形式8500形、ナンバー8503と変更された(国鉄蒸気機関車小史)。
 1枚の記念切符から思わぬ事柄に出会い、歴史に触れられたことは何よりの収穫で、これも鉄道趣味の醍醐味であろう。