転轍器

古き良き時代の鉄道情景

大和八木

 奈良での用事を済ませて大阪環状線鶴橋に戻るには大和西大寺から近鉄奈良線が通常のコースである。奈良線は乗車経験があったので、まだ知らない大阪線に乗ろうと大和西大寺から近鉄橿原線で大和八木へ向かった。大阪線のホームは2階にあり、階段を上ってホームへ出ると陽は傾いて長くなった影が電車に差しかけていた。 近畿日本鉄道大和八木 撮影は全て H20(2008)/2/1

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 大阪線のホームに出るとちょうど6輌編成の“急行宇治山田行”が動き出したところであった。方向幕に掲げられた「宇治山田」の駅名は旅情が漂いこのまま三重県に行きたくなる衝動に駆られる。後年、“線路端のブログ”で宇治山田の駅舎を知り「威風堂々」の表現がぴったりの建物であった。

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 大阪方面4号線ホームは“準急上本町行”が入線、乗換え客で賑わい、こちらは日常のラッシュアワーの様子である。関西ではホーム番号の呼称は〇番線ではなくて〇号線と呼んでいたのが印象的であった。

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 大阪線ホームの駅名と乗換えの案内表示。階段を降りて北行は天理・大和西大寺・奈良・京都方面、南行橿原神宮前・飛鳥・吉野・御所方面でまだ行ったことのない土地へ近鉄優等列車で訪れてみたいとこの時誓ったがまだ実現はしていない。

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 大和西大寺から乗車した橿原線の急行電車の方向幕。初めて知る地名、初めて触れる難しい漢字であった。

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 大和八木は橿原線大阪線が垂直交差している。橿原神宮前行は6号線に着き、上階の大阪線鶴橋方面3・4号線へは階段を上がる。大阪平野奈良盆地生駒山地で遮られ、奈良線大阪線とも生駒山地を急勾配で越える。奈良線での山越えを体験したので今度は大阪線の山越えはどうなのか興味もあって、遠回りを承知で大和八木へやって来た。

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 大阪方3号線の出発信号機。主信号は大阪方出発、副信号は京都方出発の標記が付いている。大和八木から見て大阪方は西向き、京都方は北向きとなる。東西方向の大阪線と南北方向の橿原線が十字で交差しているのに、大阪と京都がまるで同方向であるようなこの進路の案内は何であろうか。それはこの先に橿原線大阪線の短絡線があり、京都と鳥羽・賢島を結ぶ特急や団体貸切列車等が通るということを知る。