転轍器

古き良き時代の鉄道情景

県境の風景 久大本線夜明と筑後大石の間

 大分・福岡県境を越える久大本線は日田盆地から筑後川沿いを走り、光岡を過ぎると一気に山間の様相に転じ、筑後川右岸の段丘にある夜明駅から日田彦山線が北に分岐する。トンネルを潜り夜明ダムを過ぎると川幅が一気に広くなってトラスの筑後川橋梁を渡ると先ほどまでの山深い景色がうそのような広大な筑紫平野の東の端に出る。大分・福岡県境は山峡と平野の始まりと終りが織りなす絵模様が展開している。

 68623〔森〕の牽く日田発鳥栖行が夜明発車、美しい弧を描いて大肥川橋梁に迫る。構内外れに立つ転轍器標識と本屋側に続く鉄管が見える。 624レ 久大本線筑後大石~夜明 S43(1968)/8/1

 夜明トンネルを抜けると右曲線で夜明構内は始まっている。左から日田彦山線が寄り添って夜明2番線に入る。鳥栖豊後森行を牽く58689〔森〕は筑後川の峡谷に沿い、今度は名前が変わって三隈川に沿って日田盆地をめざす。 629レ 久大本線筑後大石~夜明 S43(1968)/8/1

 由布院鳥栖行のD602〔大〕が夜明到着。大分のひと桁ナンバー2と3には会えなかっただけにこの機関車には特別な威厳を感じる。ホーム外れに立つ2基の信号機は曲線上に設ける中継信号機かも知れない。そのリレーボックスと詰所、自転車も見える。駅員の姿もあり、夜明はかなりの数の駅員が働いていたものと思う。 626レ 久大本線夜明 S43(1968)/8/1

 大分発鳥栖行638レから見た夜明3番線は門司発日田行729レが停車している。両列車とも16:34夜明を発車する。蒸気が上がるC11、日田行のサボが付いたオハフ33、ホーム上の「通票確認ニ秒間」の標語、手入れされた植木、ホーム擁壁面の縦位置の土止め等良き時代の鉄道情景が写っている。 夜明 S45(1970)/8/1

 夜明場内信号機横を行く日田発門司行728レは少し煙突が短いような気がするC11376〔門〕が牽いて来た。電柱脇に見える勾配標は今山からの連続下り勾配が夜明構内手前で6.2‰の上りを示しているものと思われる。後方の山に掲げられた看板は酒どころ日田の清酒の銘柄のようでとても懐かしく映る。 日田彦山線今山~夜明 S43(1968)/8/1

 上り列車で夜明を出ると長短6つのトンネルを抜けたところで筑後川橋梁を渡り、そこが大分県と福岡県の県境となる。車窓は深かった山の様相は一変、なだらかな平地に下りた印象を受ける。夜明から続いた連続下り勾配はR400の曲線を行く辺りから平坦になる。 久大本線筑後大石~夜明 S43(1968)/8/1

 D6021〔大〕の牽く大分発鳥栖行が筑後川橋梁を渡ってすぐの住宅地を抜けて水田の間のきれいな築堤を進む。通信線電柱がよくマッチする景色と思う。 628レ 久大本線筑後大石~夜明 S43(1968)/8/1

 朝霧の中、台地からハチロクの牽く日田発鳥栖行上り列車を見る。後方は大分県側の山並みが望める。 626レ 久大本線筑後大石~夜明 S44(1969)/7/29

 上り日田発鳥栖行626レと下り鳥栖豊後森行629レは何れもハチロク牽引で筑後千足で交換する。筑後大石から夜明にかけては上り勾配となり豊後森行68623〔森〕は4輛の客車を従えてドラフト高々に現れた。キャブ前方の扉が全開だ。 629レ 久大本線筑後大石~夜明 S44(1969)/7/29

 8620牽引の鳥栖行626ㇾの次は由布院鳥栖行628レがやって来る。カーブした築堤の先の切通しの跨線橋から上り列車を捉える。D6062〔大〕は9輛の客車を軽々と牽いて来た。由布院を出る時は4輛なので日田で増結するものと思われる。台地を覆う朝霧はまだ晴れていない。 628レ 久大本線筑後大石~夜明 S44(1969)/7/29

 以上10点 昭和43年~45年撮影 写真提供:小川秀三さん