転轍器

古き良き時代の鉄道情景

直方で会った9600

 いかにも筑豊の機関車といったプロポーションのキュウロクと会う。継足しの長い化粧煙突、がっちりとしたボイラとはアンバランスに映る扁平なドーム、2段ランボード、キャブ裾の点検窓等は典型的な筑豊スタイルだ。 39638〔直〕 直方 S45(1970)/8/3

 デフの有無で印象はすっかり変わる。大形前照灯LP403を持ち、キャブは2枚窓で裾の点検窓は開けられていない。テンダは古いタイプに映る450立方呎のようだ。 19659〔直〕 直方 S45(1970)/8/3

 一直線のランボード前寄りに元空気溜と何度も折り返された放熱管が付いてバランスが悪いような気がする。パイプ煙突もまた印象は異なり、片側の開放テコはゴツゴツした前端梁がすっきりと映る。標識灯の赤色板は左右で位置が異なる。 49619〔直〕 直方 S45(1970)/8/3

 太いボイラと小さな動輪、リベットが並ぶ3軸テンダのキュウロクはとても魅力的で、斜め後ろからの眺めもまたチャーミングに映る。23線もある巨大な扇形庫脇で出区準備万端、煙を噴き上げている。 39625〔直〕 直方機関区 S45(1970)/8/3

 29611は誕生以来九州から出ることは無かったようだが、前照灯は何故かシールドビームであった。この機関車とは縁があるのかこの後田川線や後藤寺で数回会っている。最後に会った昭和48年春はLP42に換装されていた。 29611〔後〕 直方 S45(1970)/8/3

 この機関車も開放テコは片側式でフロントはとてもシンプルに映る。缶受けのラインが優雅に感じる。LP42の両側にリンゲルマン濃度計とコンプレッサー排気管が並ぶ。 69632〔直〕 直方 S45(1970)/8/3

 跨線橋から見るとデフステイの付き方や扁平なドームの角度、キャブ屋根と発電機の排気管などがよくわかる。 69615〔行〕 直方 S46(1971)/8/10

 デフ付き化粧煙突とデフ無しパイプ煙突の組合せの9600重連が発車合図を待っている。伊田線糸田線後藤寺線を通って船尾へ向かう石灰石返空編成を従える。 39601〔直〕+59681〔後〕 直方 S46(1971)/8/10

 この時直方機関区のディーゼル機関車はDD13が3輛配置されていただけで、まだ蒸機全盛の時代であった。手前からDD13382〔直〕、49619〔直〕、29611〔後〕が並ぶ。 直方機関区 S45(1970)/8/3

 筑豊のキュウロクは石炭車編成を牽く姿が一番似合っていると思う。テンダにローマン書体の形式入プレートを付けた79635〔直〕が山元へ空のセラを返しに行く。 直方 S46(1971)/8/10

 昭和40年代中頃、北九州・筑豊地域では門司機関区15、行橋機関区11、若松機関区9、直方機関区19、後藤寺機関区11の計65輛の9600が網の目のように張り巡らされた線路を闊歩していた。本線・支線から盲腸線・短絡線・専用線まで隅から隅まで活躍していた。石炭・石灰石・セメント・一般貨物輸送に従事する多彩な9600群に思いを馳せる。