転轍器

古き良き時代の鉄道情景

文通の写真から 北恵那鉄道

 岐阜県の地図を見ると、南は濃尾平野の平地が広がる一方、北と東西で接する県境は山地、山脈が連なる山々に囲まれた山岳県ということがわかる。北恵那鉄道は県南東部に位置する中央西線津川駅最寄りの中津町から木曽川の支流、付知川に沿って下付知に至る22.1Kmの路線であった。他の中小私鉄同様モータリゼーションの浸透で昭和53年9月に廃止され、54年間の歴史に幕を閉じている。前面3枚窓の電車が並ぶ味のある車庫風景は賑やかな頃の雰囲気が伝わってくる。 北恵那鉄道中津町 S45(1970)/7/30 撮影:HAYAさん 所蔵:転轍手

 中学生時代、汽車好きの友を求めて旺文社の学習雑誌の文通コーナーに応募し、そこで知り合った同級生と鉄道写真の交換を行っていた。数人とやりとりし、顔を知らないまま社会人になる位まで続いた友もいた。音信が途切れた理由は卒業、入学、就職などお互いが忙しくなったからか、自然消滅なのかは思い出せない。家の片付けで半世紀ぶりに開いた菓子箱の中に当時の手紙や写真を発見し、まるでタイムカプセルを開いたような感激がこみ上げる。定形郵便の封筒に入った手札サイズの“鉄道写真”はDPEの処理が良かったからか変色もなく、当時のままの輝きを放っているようだ。
 中学、高校時代はまさに蒸機終焉の頃、知らない地域の私鉄電車には興味が持てなかった時期であった。あれから少しばかり視野と見聞が広まった今、思い出の写真は注目に値する「古き良き鉄道情景」として心にしみわたる。