転轍器

古き良き時代の鉄道情景

由布院 昭和60年春

 DE10牽引の客車列車を追いかけて一段落ついた際、由布院駅に立寄ってみた。2番線は久留米発由布院終着の4輛編成がひっそりとたたずんでいた。

 久留米からの列車は1時間以上待機し列車番号が変わって大分行となる。列車が来ない構内はゆったりとした時間が流れていた。蒸機時代は給水塔の向い側、ホームの先端にスポートがあり、水分越えに挑むD60が給水を行っていた。

 給水タンクと詰所はかつてのままの風情が漂う。建物の看板は「由布院駐泊所」と読める。

 峠から5輛編成の急行列車が降りて来て駅は賑やかになってきた。

 急行列車5輛のエンジン音が響き渡り、普通列車4輛のアイドル音をかき消す。

 スカート回りのジャンパ栓受とホースが賑やかなキハ65が先頭に立つのは、博多発別府行急行“由布3号”。

 急行が出てまた元の静寂にもどる。左の出発信号機脇に残る転轍小屋に「進路は…連絡確認」の標記が掲げられている。蒸機時代はこの小屋の前に待機線が引かれ夜を明かすD60が入っていた。 久大本線由布院 S60(1985)/5