転轍器

古き良き時代の鉄道情景

大崎界隈

 東海道新幹線上りの海側3列座席の窓側から見える景色は、多摩川を渡ると市街地の掘割の中を新幹線の複線と、謎の複線が寄り添う複々線の様相が続き、そのうち並んでいた謎の複線は新幹線の高架の下に潜って見えなくなる。
 下りの山側2列座席窓側の車窓は、東京駅出発後八ツ山トンネルを出ると山手線の複々線と並び、手前の複線がもう1組の謎の複線となって分岐し、新幹線高架の下に隠れてしまう光景がとても気になっていた。
 山手線電車からも見えた謎の複線分岐と、東急田園都市線下神明駅高架下に見えた謎の線路はつながっていることを知り、私にとって大崎界隈はそれは不思議な鉄道地帯であった。

 後年、謎であった線路は以下のように整理することができた。
山手貨物線 田端操車場~品川
品鶴貨物線 品川~新鶴見操車場~鶴見
・目黒川信号場 山手貨物線品鶴貨物線の分岐点
・蛇窪信号場 品鶴貨物線と大崎支線の分岐点
・大崎支線 大宮(操)・田端(操)と新鶴見(操)を直通させる短絡線

 品鶴貨物線が大崎支線と品川電車区、大井工場の入出区線を乗り越す。ヘッドライト点灯のEF65513〔広〕は長躯太平洋ベルト地帯を東上し、終着まであと少しだ。

 新幹線山側2列席から下方に見えた景色はこの構図であった。目黒川(信)で分岐した品鶴貨物線西行フレートライナーが通過する。

 大崎構内を横切る新幹線と品鶴貨物線の高架橋。画面手前が品川電車区と大井工場、奥が大崎駅で目黒川信号場から分岐した山手貨物線の複線が右側より地上に下りて来る。2面4線の山手電車線は大崎始発終着の入出区線が画面手前、柵の向こう側に伸びている。

 田端操車場方面から山手貨物線を通って来たEF13牽引の貨物列車は大崎支線を通って品鶴貨物線へと歩を進める。

 田端方から新鶴見方へ向かうEF15重連のフレートライナーが大崎のミステリーゾーンを行く。通運会社のロゴが入ったロングサイズのコンテナ編成は大動脈の息吹を感じる。 大崎付近 S50(1975)/5/30

 「かくて、われらが日々-昭和30年代首都圏の鉄道」(鉄道ピクトリアル臨時増刊/平成7(1995)年5月刊)綴込みより

 この地図は「旅客事務用鉄道線路図/昭和37年1月1日現在/日本国有鉄道営業局」と記されている。目黒川・蛇窪の各信号場、また貨物線や貨物駅も記載されたとても興味深い地図であった。このような地図が撮影時にあったなら、まだ知らない貨物線に足を運んでいたかもしれない。