転轍器

古き良き時代の鉄道情景

国鉄大井工場高架水槽

 8月7日掲載「大崎支線を行く」の記事の中で、新鶴見方から現れたEF651000番台機が牽く貨物列車後方に写っていたタワー状の構造物は何なのか気になっていた。その写真のトリミングを変えて拡大したのがこの画像である。

 私は独特な形から遊戯施設か商業施設の広告塔かと思っていた。東京都の線路端さんから「ねぎ坊主の正体は国鉄発注により大井工場構内に日立製作所が製作した高架水槽ですよ」の知らせを頂き、思わぬ物が写っていたなと驚愕した。

 「日立ニュース1964年2月号」(1960年代日立論評Web)から

 日立ニュースから一部抜粋する。『日本国有鉄道から受注した大井工場高架水槽が完成した。本高架水槽は、地上約20mのところに設置した球形容器で、支柱は建設費の低減を図って、従来鉄骨構造であったものを円錐状にしたので外観も一段と良くなった。水圧の高い時に本高架水槽に水を張り込んでおくと、水圧が下がった時にもポンプ無しで給水できる。これから供給される水は、車輛の洗浄水、機関車のボイラ用水などとして使用される』。

 「文庫判1/1万東京23区」(昭文社/平成14(2002)年1月刊)から

 EF65貨物列車の写真は交差点名「西品川1」の位置から、大井工場の縁に沿った大崎支線のインカーブから撮ったもので(赤矢印)、件の給水塔は線路脇に建っているように見える。

 「RM LIBRARY193 国鉄工場めぐり(中)」 (ネコ・パブリッシング/平成27(2015)年9月刊) 14.大井工場から

 国鉄工場めぐり3分冊の中に大井工場のページがある。大井工場平面図は昭和51(1976)年頃とのこと、各施設・職場の名称が記されている。図面上方中央に「給水塔」の位置を示す印が付けられている(赤文字)。大崎支線(平面図は品鶴大崎支線と記載)のすぐ脇に工場西門があり、ボイラー室のとなりが給水塔である。これが「高架水槽」ではないかと推測する。

 何でもない写真に写り込んでいた物体は、実は貴重な国鉄施設の構造物ということがわかり、同好の士からの指摘や教示はとてもありがたく刺激を受ける。何か手がかりがないかWebや鉄道書籍を探るのは趣味の醍醐味といえる。