豊後三芳駅を発車した久大本線下り列車は上り勾配となって日田盆地を抜け出して急峻な渓谷区間へと向かう。上り25‰途上に門鉄と分鉄の管理局境界があり、小ケ瀬トンネル596mを抜け視界が開けたところで衝撃的な景色と出会う。山腹を這う数条の鉄管と発電所の建屋はとても印象的で、慌てて後追いぎみにカメラを向けたものと思われる。 久大本線豊後三芳~豊後中川 S45(1970)/6/6
女子畑水力発電所は大正2年に建設され、当時としては最大の発電量を誇り、官営八幡製鉄所へ送電していたことを知る。
発電所は今も健在で玖珠川沿いの国道から見ることができるが、そういえば列車で何度か通った際は視界に留まらず、改めて下り列車で小ケ瀬トンネルを出た先を注視した。驚いたことに草木で何も見えず、視界が開けた時は第1玖珠川橋梁上であった。連写した1枚にかすかに建屋の窓が写っていた。
道路から見た樹木の様子(下流側から)。
木々の間に架かる鉄橋の位置から発電所を見る(上流側から)。
振り返るとこの構図。線路はかなり高い位置にあり、木々のトンネルから一瞬視界の開けた所に鉄橋が見えた。第1玖珠川橋梁手前の鉄橋で、この位置から発電所は見えない。あの時の眼下に広がるロマンを味わうことはできなかった。時の経過の重みを思う。
列車は玖珠川をさかのぼるように山岳地帯へ入って行く。旅館らしき建物が見えてきて天ヶ瀬温泉街へ差しかかってきたようだ。 久大本線天ヶ瀬付近 S45(1970)/6/6
玖珠川が車窓右側へ来る第8玖珠川から第9玖珠川橋梁辺りと思われる。 久大本線天ヶ瀬~杉河内 S45(1970)/6/6
列車はいつの間にか玖珠盆地に入り豊後森に着く。豊後森機関区の扇形庫を右手に見て進むと、盆地の里山風景の向こうに三角形の小倉岳が姿を現す。 久大本線恵良~引治 S45(1970)/6/6
豊後中村で上り貨物列車と交換する。 久大本線豊後中村 S45(1970)/6/6
豊後中村から25‰上り勾配は野矢に向かって延々と続く。キハ58のエンジン音も一段と大きくなる。前方の形の美しい山は標高1036mの横山と思われる。 久大本線豊後中村~野矢 S45(1970)/6/6