まだ夜が明けやらぬうちに通り過ぎて行った551レの数十分後、2本めの571レを待つ。朝日が昇ってやや明るくはなったが線路は依然として山影の中、山裾を這う煙を追いかけながら国道脇の足場から俯瞰し、列車の動きと風で流される煙のタイミングを見定めながらファインダーに集中する。
風が強い。谷底を線路が通っているので風が舞い、煙とドレンが列車にまとわりついてシャッターのタイミングがあわない。
眼下に迫った571レ。第一大原トンネル手前で機関車の咆哮がまわりの谷にこだまする。煙は上に流れてくれて続く貨車の列が姿を現した。
朝露の降りた厳寒の峠道、凍てつくような静けさの中を遠くから迫ってくるドラフト音はボリュームのつまみを回すように次第に大きくなり、トンネルに入るやいなや音が消えてまたもとの静寂に戻る。ドラマは川原木信号場から重岡まで約7Kmの連続20‰上り勾配で繰りひろげられ、そのクライマックスが第一大原トンネル手前である。D51の奮闘を堪能した暁の宗太郎越えであった。 571レ 日豊本線川原木(信)~重岡 S47(1972)/12/29