転轍器

古き良き時代の鉄道情景

遠い日の大分平野

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 山がちな中九州で大分川と大野川が別府湾に注ぐ大分平野はそう広くはない平地である。そんな大分平野を見渡せる場所が滝尾駅からほど近い中学校の裏山にあった。早朝、豊肥本線下り一番列車を見るためにその裏山に登ってみた。南西方向を見ると大小の山が迫り、朝もやがかかっている。画面左に見える小高い山は滝尾駅のすぐ脇にある“碇山”で、神武天皇が東征の折に立寄って碇を降ろしたことからその名がついた、という伝説が残っている。一番列車は米良川の堤防の勾配を越えあとは平坦な道を快走するだけである。

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 豊肥一番は豊後竹田5:30発、緒方5:51、三重町6:13、犬飼6:37、滝尾7:09、大分7:18着で運転される。途中三重町で熊本行気動車と、犬飼で豊後竹田行貨物列車と、竹中で犬飼始発の送り込み回送気動車と、中判田で豊後荻行気動車と交換する。滝尾を出た列車は白煙をなびかせて中学校のグラウンドの先、神社の脇を通過する。はるか後方に由布岳がかすんで見える。 721レ 豊肥本線滝尾~大分 S46(1971)/3

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 6輛編成の列車は軽快なジョイント音を響かせて大分平野を駆ける。市街地が見えてきて北西向きに大きく弧を描き、下郡信号場を通過すると、日豊本線と並んで大分川橋梁を渡る。橋梁通過は大分平野いっぱいに響きわたるような轟音が裏山まで届く。大分平野を見渡せるこの山は滝尾発車から大分川通過までの約7分間、蒸機列車の走行音が楽しめる絶好の場所であった。