転轍器

古き良き時代の鉄道情景

広島電鉄3000形

 月刊の鉄道雑誌は気に入った記事があれば購入し、その部分を読めばあとは本棚の飾りとなりよほどのことがなければ再び開くということは希である。最近になって路面電車の事を調べるのにバックナンバーを漁っていたら思わず広島電鉄の3000形に目が止まった。前歴は西鉄福岡市内線の電車であったということを知ったからだ。

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 広島市内で撮ったネガを見ると偶然にも3000形が写っていた。車と被っていたので残念写真で日の目を見ることはないはずであったが急きょ引っ張り出してみた。趣味誌の記事によると西鉄の連接車が広島電鉄に移籍した後、宮島線直通運用に就くため3車体連接車に改造されたとのことであった。西鉄のA・B車を組合せて中間車を生み広島電鉄3000形A・C・B車が誕生した。方向幕や前照灯の屋根上移設等の改造も行われている。 3007 胡町 S57(1982)/8/18

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 撮影時はこの電車が元西鉄福岡市内線の電車だとは思う術もなかった。今改めてA・B車を見比べると窓配置A車:3D3、B車:D4D1で同じということがわかる。「3両連接車 広島電鉄」のヘッドマークを誇らしげに掲げている。

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 パンタグラフ西鉄時代にはなかったB車にも搭載されている。後方は元神戸市電の586が見える。バックビューのバスはグリーンラインが目印の広電バスかもしれない。

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 中間のC車は西鉄時代のB車を前方扉と窓1個分の所で切断したようだ。前面は胸のヘッドライトが屋上に、標識灯が追加、方向幕の大形化で印象はかなり変わっている。 3005 胡町 S57(1982)/8/18 

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 西鉄福岡市内線は昭和49年如月に受験のために乗った思い出がある。友人と4人で西鉄平尾をベースに国鉄博多駅往復、試験会場下見、本番当日にと揺れる貫線や城南線に乗車した。神妙な面持ちで受験要項に目をやる友を横目に路面電車前面展望を味わった。天神のクロス、薬院踏切の大牟田線との平面交差はゴトン、ゴトンと重たい響きの交差音が今も耳に残っている。その後別れ別れになった友に会いに再来した時は地下鉄工事で市内線は姿を消していた。西鉄福岡市内線の乗車体験は千載一遇の好機であった。広島電鉄3000形の事から忘れかけていた思い出が蘇ってきた。